資産運用に適切な金額はいくら?
2018/01/09 資産運用
ここ数年、NISAやiDeco(個人型確定拠出年金)といった資産運用の分野で税制度等が整備されてきたおかげでしょうか、若い方の資産運用に関するご相談も増えてきました。
目次
資産運用には、目標設定が大切
資産運用にあたって重要なポイントとなるのが、「どれくらいの期間」で「いくら」にするのかという「時間」と「金額」の目標を決める(=目標設定)ということです。このことについては以前のコラムでもご紹介していますので、参照下さい。⇒ 「確定拠出年金(iDeco)、運用商品を選ぶ前に決めること」
さて、時間と金額の目標を決めると一口にいっても、一体何を基準に考えればよいのでしょうか?
● 月々いくらであれば、長期間取り崩すことのない積み立てにまわせるのか、
● 自分たちの家計にとって、長期間(少なくとも10年以上)手を付けずに済むお金は一体いくらなのか、
適正な金額がわからない方も多いのではないでしょうか。
けれど、キャッシュフローシミュレーションという方法を使えば、その具体的な金額や目標とする期間が簡単に見えてきます。
具体的な例を使いながらご紹介しましょう。
こつこつ積み立てながら資産運用する場合
積み立てという方法で資産運用する方の多くは、子育てや住宅ローンのために、まだまとまった金融資産を保有していない、現役世代の方々でしょう。
次のグラフは、キャッシュフローシミュレーションによってAさん(サラリーマン:42歳)の家庭の貯蓄残高の推移を予測したものです。
赤い折れ線は、Aさんの貯蓄残高の推移を表しています。
Aさん40代後半までは貯蓄は増加傾向ですが、子どもが高校、大学へ進学するころ(Aさん50代前半)は貯蓄が減少しています(貯蓄の取り崩し)。
50代では赤い折れ線が谷型にへこんでいますが、その谷底は55歳時、貯蓄残高約450万円です。
このような貯蓄の推移が予測されるAさんが、将来の老後資金の形成を目的にして無理せず積み立てに回せる金額のイメージを表したものが、次のグラフの赤い点線矢印です。
そして、毎月資産運用のために積み立てが可能な金額は次のように計算します。
450万円 ÷ 12年間 ÷ 12月 = 約31,250円
ただしここで注意しておかなければならないことがあります。
上記の計算で求めた答え(=31,250円)は、あくまでも、積み立てに回せる金額の最大値であるということです。最大値(31,250円)の積み立てを続けていると、Aさん55歳時の予備資金がゼロになってしまいます。
長期間にわたる積み立てや資産運用を行っている間には、家計収支が思っていた通りにならないことだってあるでしょう。また、子どもの進学やAさんを取り巻く環境に予期せぬ変化が生じることもあるでしょう。
ですから(上図の)Aさん55時の貯蓄残高約450万円を、次のように2つに分けて考えます。
①350万円=資産運用に回すお金
②100万円=予備資金(今後のライフプランの“ぶれ”または誤差に対応する資金)
※①②の金額の割り振りは一つの例です。
このようにして考えると、Aさんの適正な積立金額は
350万円 ÷ 12年間 ÷ 12月 = 約24,300円 となり、下図はそのイメージです。
まとまったお金を資産運用する場合
一般的なサラリーマンにとって、人生で最も金融資産が大きくなるタイミングは、退職金を受け取った直後です。
Bさん(サラリーマン:58歳)の場合で考えてみましょう。
先ほどのAさんと同じように、キャッシュフローシミュレーションによってBさんの今後の貯蓄残高を予測してみました。
赤い折れ線は、Bさんの貯蓄残高の推移を表しています。
Bさんは60歳で退職金を受け取り、その時に予想される貯蓄残高は約4,400万円です。
退職後は貯蓄を少しずつ取り崩し、
70歳時の貯蓄は約2,000万円、
75歳時の貯蓄は約1,100万円、 と予測されます。
さて、どの程度の金額を「長期で安定した」資産運用に回せばよいのでしょうか。
次の図のようにイメージしてみましょう。
退職直後の4,400万円の内、
①の約1,100万円は、75歳まで使わずに済む。⇒ 15年間の資産運用が可能
②の 約900万円は、70歳まで使わずに済む。⇒ 10年間の資産運用が可能
③の約2,400万円は、70歳までに使う。⇒ 長期間の資産運用にはふさわしくない
キャッシュフローシミュレーションによって、計画的な資産運用が可能になる
上記Aさん、Bさんの例からもわかるように、キャッシュフローシミュレーションという方法を使えば、
「いくら」を「いつまで」運用できるか、容易にイメージすることができます。
そしてこのキャッシュフローシミュレーションは「資産運用」だけでなく、住宅ローンの組み方や家計の見直し、保険を設計する場合などなど、ライフプランの様々な場面で有効なツールになります。
さて、みなさんの場合、
どのようなシミュレーションになるのでしょうか?
ファイナンシャルプランナー 三谷慶太