相続対策や遺言書を作る前に、やっておきたい大切なこと
2017/03/26 老後
お墓に入るまでの心得
誰の人生にも必ずやってくる共通の課題は、「お墓に入るときのこと」 です。
できれば早めに向き合ってほしいと思います。
目次
財産がある人も、ない人も
「お墓に入る」 というのは、要は、「人が亡くなる」 ということで、私たちファイナンシャルプランナーが仕事としてそこに関わるのは、「相続」 という、何がしかの 「財産の継承」 が絡むときです。
ファイナンシャルプランナーとしてそれなりに長く仕事をしていると、お客様のおめでたいことだけでなく、そのような形で、ご不幸ごとにも多く関わってしまうことになります。
しかし、財産の有る無しに関わらず、全ての人が 「そのとき」 のことをしっかりと考えていてほしいと、私は思うのです。
いや、「財産の有る無し」 という表現は少し間違っているかもしれません。税務署が認める財産だけが 「財産」 ではありませんからね。他人にとってはなんでもないものでも、私にとっては滅茶苦茶大きな価値がある、なんていうモノやコトは、たくさんあるでしょう。
そういう広い意味での財産も含めて、「お墓に入るとき」 は、その財産をバトンタッチするときでもあるわけです。
家族(大切な人たち)に気持ち、思いを伝える
様々な 「財産」 をバトンタッチするときに、私が特に大切だと思うことは、その一つ一つの財産にこめられた、あるいは宿る 「思い」 のバトンタッチです。そして、その 「財産」 を受け継ぐ人の 「思い」 です。
(税務署や他人が価値を認めるかどうかは全く別にしても) 「財産」 の多くは 「目に見える」 「形あるもの 」 ですが、「思い」 に形はありません。目に見えません。
だから私は、思うのです。
この形のない 「思い」 だけは、お墓に入る前にしっかりと周りの人に伝えておかなければなりません。
伝えられるときに、しっかりと伝えておかなければなりません。
場合によっては、面倒くさいことかもしれませんが、一度ではなく、何度も何度も、伝えておいたほうが良いかもしれません。
・私はこんな人生を歩いてきて、これにはこんな思いがこもっている。 だから○○さんにこのバトンを受け取って欲しい。
・こちらにはこんな思い出がある。 だから△△さんにこのバトンを受け取って欲しい。
「思い」 や 「思い出」 は、話すと長くなるでしょう。
しかしその長い話が、きっとその 「財産」 の価値をさらに高めます。
難しい問題も一つ。
それは・・・、
日ごろは、「誰が先にお墓に入ることになるのかわからない」 ことです。決して 「歳の順」 ではないことです。
だからお正月など、家族が多くそろっているときにでも、お互いがお互いの 「人生」 や 「思い」 のお話を、たくさん、たくさんできたら理想的だと思うのです。
できれば、皆にとって 「お墓は、まだまだ遠い先のこと」 と思えるくらい、皆が 「若い」 ときから、そういうお話ができていたら、ずっといいでしょうね。
財産の分け方は、家族全員に同じ場所で伝える
自分が死んだあとに、どの財産をだれに引き継いでほしいか、それは家族全員がそろっている時にお話ししましょう。
A子は結婚して遠くで暮らしているから、土地ではなくてお金を
B子は祖母が大好きだったから、祖母から受け継いだ土地を
C男は起業したいと言っていたから、お金ではなく会社の株を
妻には、長年住み慣れた今の住まいと○○銀行の預金を。施設に入りたくなったら今の家土地を売ればいいね。
というように。
家族の関係が良好で自分もまだまだ若い、と思っている方は、今の内にお話しする機会を作りましょう。
あなたが亡くなった後の無用の争いごとを防ぐことにもなるはずです。
(もちろん遺言書を作成しておくことができれば、それに越したことはありません)
逆に、財産に関わることをそれぞればらばらにお話ししていたら、
「あれ、私が聞いていることと違う」
「オヤジは俺には違うことを言っていた」
などということも起こりがちで、かえって「相続」 ⇒ 「争続」 の火種になりかねません。
誰のための「財産」なのでしょうか?
こういうこともありました。
昨年お亡くなりになった方から、生前に受けたご相談。
先祖代々受け継いできた 「財産」 があるのだけれど、今の私にはそれを 「守り」 「維持」 するだけでも一苦労。
わずかな自分の生活費を削りながら何とか維持しているけれど、何か良い方法はないかしら。
私はお答えしました。(このお答えには異論も多くあるでしょうが)
ご先祖様はその 「財産」 をあなたにバトンタッチするときに、
きっと 「あなたが幸せになるための、土台として活かして欲しい」 という 「思い」 だったと思います。
その 「財産」 の形を変えて(お金に換えて)、バトンを受け継いだ人が活き活きとした人生にするために使うのであれば、ご先祖様も、文句を言うどころか喜んでくれるのではないですか。
「気持ち」「思い」の相続
「相続」 という言葉からはなんとなく 「財産」 をイメージしてしまいがちですが、
「思い」 の相続、
こちらが実は大切。
この 「思い」 の相続は、常日頃から心がけたいと思っています。
そして、エンディングノートも若いときから、ですね、きっと。
「出生」 で 「いのち」 のバトンをつないで、
「お墓に入るとき」 までに 「思い」 のバトンをつなぐ。
ファイナンシャルプランナー 三谷慶太