何やってんですかっ!? ~ 子どもたちが背負う借金は重くなるばかり ~
2023/05/04 家計
1年ほど前の2022年2月、「自分を守るための資産運用」というタイトルの記事を掲載しました。今回はその姉妹編です。(と言っても、資産運用とは少々違ったお話です)
目次
1年前の今頃は
1年前の記事を書いたとき(2022年2月上旬)の状況は、
まだロシアがウクライナに侵攻する前、欧米ではインフレが始まっていましたが、日本の消費者物価はまだ不気味に落ち着いていました。為替も1ドル113円前後で、今となっては遠い昔の話のようです。
1年前の記事でみなさんにお伝えしたかったことは、日本国の借金が世界でも突出して大きく、そのまま借金が膨らみ続ければ財政破綻やハイパーインフレの可能性も否定できないこと、そしてそのような事態に備えて私たちは外貨建ての資産にもお金を振り向けるべきではないか、ということでした。
<G7各国の政府債務残高:出所IMF(2021年)>
※ 1年前の記事は → 家計と暮らしと住まいの相談室 → 学ぶ → 資産運用
1年経った今、状況はよくなるどころか、日本国の借金はさらに約30兆円も増えました。
衰退途上国、日本
ノーベル賞を受賞した経済学者のサイモン・クズネッツは以前、次のようなジョークを飛ばしたといわれています。「世界には4つの国がある。先進国と途上国、そして日本とアルゼンチンだ」
日本は先進国から脱落して衰退の途上にある国、アルゼンチンは先進国から衰退してしまった国、という意味で、日本国民にとっては笑える話ではありません。
にもかかわらず、世界でもダントツの借金を抱えるこの国では、あいもかわらず様々なバラマキ政策が続いています。一つ一つの「支援策(バラマキ)」は、私たちの家計にとって、また国の経済にとって「ありがたい」「助かった」と言えるものかもしれません。しかし借金超大国に暮らす私たちはそれを喜んでいてよいのでしょうか。
国が大きなお金を使おうとするとき、通常は他のお金の使い方を見直して必要なお金を捻出するでしょう。けれどそれだけで賄えない時にそのお金を準備の仕方は2通りです。
ⓐ 増税する か、 ⓑ 新たに借金する か、です。
そして私たちが選挙で1票を投じた政治家さんたちは長らく、
「増税せずに、ⓑ 新たに借金する」ことを続けてきました。
政治家さんたちにとって「増税」は票になりません。私たち国民にも不人気です。手っ取り早く当選するためには「ⓐ 増税する」なんて言ってられません。
でも、これから生まれてくる子どもたちがもしも声を発することができたなら
「お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、新たな借金には絶対に投票しないで!」
って言うはずです。
世界でも類を見ない、ダントツ1位の、ぶっちぎり1位の借金を、ぼくたち(わたしたち)に付け回さないで!ってきっと言うでしょう。
1年前の記事を引用しましょう。
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国際通貨基金(IMF)が2021年10月に公表した報告書では、日本国政府の債務残高は約1,420兆円、それは国の経済力を表すGDPに対して256%。しかも最近の国の税収は約60兆円で支出(国家予算)は約100兆円、ということはコロナ禍がなくても毎年40兆円ずつ国の債務は増え続けているのです。
・・・こんなことを言われても、私たちフツーの国民には天文学的な数字で全く実感がわきませんよね。私たちの家計に置き換えてみるとざっと次のような感じです。
年収600万円の家庭が年収の20倍を超える1億4,000万円の借金を抱えていて、毎年400万円借金を増やしている・・・。
いったい誰がこんな家庭に毎年追加でお金を貸すんでしょう?
(私だったら絶対に貸しません)
———— 2022年3月—————————–
借金したお金の使い道
昨年来、様々なモノの値段が上がっています。中でも大きな値上がりを示しているのはエネルギー価額です。
そこで先進各国は、多少の時間はかかるかもしれないけれど脱炭素エネルギーなどの次世代エネルギーの開発と省エネ対策に重点的にお金を使うようになりました。
ところが日本国が重点的にお金を使ったのはガソリン代の補助や電気ガスの価額抑制のための補助金です。
目先の問題にしか対応せず、(未来の子どもたちではなく)今の大人たちの負担(増税など)の話は先送りし続ける、そんな政治家さんたちに一票を投じてきた私たちも、いい加減自分のことが恥ずかしくなってきました。
30年ほど前に「自民党をぶっ壊す!」と言って国の将来を見据えた構造改革を断行した某首相。そのような芯の通ったリーダーは長らくこの国には見当たりません。
今は不人気でも、ガソリン代の補助や電気ガスの価額抑制のための補助金にお金を使うのではなく、他の先進国のように次世代エネルギーの開発や省エネ対策に大きなお金を振り向けることができたなら、長期的には温暖化対策にも有効で、未来の子どもたちへの小さな誠意にもなるのではないでしょうか。
ロシアのウクライナ侵攻に欧米が経済制裁で対抗した際に、ロシアはヨーロッパへのガスの供給削減を打ち出しました。そのとき当時の英国のジョンソン首相は(私個人的には好きではありませんが)「自由を取るかエアコンを取るかと聞かれれば、私たちは自由を取る」と断固とした態度を示しました。また膨大なバラマキ政策に不興を買って退陣したトラス首相の後を受けたスナク首相は、国の財政を安定させるために「増税する」と断言しました。
・自由と民主主義を守るためには、エネルギー価額が高騰しても甘んじて受け入れる。
・国の財政を安定させるためにはバラマキはしない、逆に増税だっておこなう。
これが日本よりもはるかに高いインフレ率に見舞われている英国の現状です。
とてもじゃありませんが、今の私たちの国では考えられませんね。与党も野党も「増税大反対」の大合唱です。まるで「赤信号、みんなで渡れば怖くない」です。
英国と日本、どちらが未来の子どもたちのことを本当に考えているのでしょうか。
子どもたちの幸せを願っているはずの日本の親たちは、借金を未来の子どもたちに先送りしようとする政治家さんたちに、いつまで一票を投じるつもりなのでしょうか。
私のささやかな“ハンガーストライキ”
多くの人に人気の「ふるさと納税」、いやいや、みなさんが気に入っているのは「納税」ではなく「返礼品」ですね。
私は嫌いです。
返礼品やその事務コストのために「ふるさと納税」という名の寄付金の約45%(2020年度は3,034億円)が使われています。本来は税金です。
世界でダントツ1位の借金を抱えている今の私たちが住む国で、返礼品という大人たちのちょっとしたお楽しみのために税金を使っている余裕などどこにもないはずです。
増税は嫌だと言いながら、毎年何千億円もの税金を大人たちのちょっとしたお楽しみのために使っているのです。
こんなことをやっていて、未来の子どもたちに何と申し開きをすればいいのでしょう?
子どもたちに言い訳できないので、私は利用しません。
仕事柄、お客様から利用方法を尋ねられた時には、しぶしぶその方法をお答えします。
でも私は、子どもたちに言い訳できないこの制度が嫌いだから、絶対に利用しません。
政治なんて嫌い。でも・・・
私がいつも接するお客様たちは100人が100人とも、それぞれご自分の子どものためにできる限りの環境を整えようとしていらっしゃいます。
なのに、私たちはいったい何をしているんでしょう!?
未来の子どもたちが暮らすことになるこの国の「お金のコト」を、今までのようにノホホンと他人事のように考えていていいんでしょうか!?
やれ「ふるさと納税でお得なものもらっちゃった」とか「旅行支援を使ってお得に旅行に行ってきた」とか、ノー天気に言ってていいんでしょうか!?
政治なんて面白くないとか、政治家は信用できないとか、多くの人はそんな風に思ってるんじゃないでしょうか。けれどそれでもやっぱり、政治家さんたちには子どもたちのために真正面から取り組んでもらわなければなりません。
そして私たち大人も、これからの子どもたちのために根気よく、憤りをぐっと押さえて、嫌いな政治のことでも、やっぱり考えなくっちゃ!
このままでは
ぼーっと生きてんじゃねーよっ!って、またまたどこかのチコちゃんに叱られてしまいます!
ファイナンシャル・プランナー 三谷慶太